2009年8月4日

ところで、市民として一番大きな美徳というものはなんでしょう?この間、エフスターフィ・イワーノヴィチがわたしとの話のなかで、この問題について、一番大切な市民としての美徳とは金儲けの才能だといっていました。これは冗談でいったことですが(これが冗談だったということはわたしも知っています)、そこに含まれている教訓は、相手が誰であろうとも他人の厄介になるな、ということです。ところでわたしは誰に対しても厄介になっておりません!わたしはちゃんと自分のパンを持っています。たしかに、それはありふれたパンで、時にはぼろぼろに乾いていることもありますが、それでもこれは自分で働いて得たパンですから、誰からも後ろ指さされずに、堂々と食べてよいものです。これで十分じゃありませんか!筆耕の稼ぎなんかわずかなものだと、自分でも承知していますが、とにかくわたしはそれを誇りとしています。なにしろ、わたしは働いて、汗を流しているんですから。

ドストエフスキー「貧しき人びと」より