2015年5月28日

ホームページを作ったのは大学4年のときだった。

その年の春、知り合いが参加しているグループ展を観に行った。
寂しさと空虚をすりあわせたような世界の中で、でも登場する人物(のような生き物)たちは飄々としていてそんなこと感じさせない、 なんというか、深刻さがない作品を描いている人が居て、目にした瞬間に心を奪われた。
水彩を施した紙を切り抜いて作るコラージュ作品だった。

qpさん。

絵の前から離れがたくてずっと見ていたら、「ホームページあるから、よかったら見てみてください。」と名刺を渡してくれた。
カードに手書きで名前と住所とURLが書かれただけの。

帰ってから見てみると、薄暗い色味の背景に作品が淡々と並んでいた。
どの絵も自分の心のどこかをキュッと掴んで離さない、そんな作品ばかりだった。
qpさんのホームページはシンプルで、作品と同じように深刻さがない。
それがとてもいいな、と、見ていると落ち着いたのを憶えている。

自分もこういう場所を持ちたいな、と思って、その日からホームページを作り始めた。
ソフトを買うと高いから何か他に方法はないのかと調べて、htmlとかいうテキストを書けばいいらしい、とか。
そうやって見よう見まねでこつこつ作っていって、結局半年くらいかかった。
qpさんと同じようにシンプルにしたかったから(というか高度な技術はなかったから)、最低限のページだけ作っていった。

ホームページを作るのは、なんとなく、家を建てるのに似ている、とそのとき思った(建てたことないけど)。
基盤となる部屋があって、そこにいくつか小さな部屋が繋がっていて、ときにはその小さな部屋同士がパラレルワールドみたいに繋がっていたり、する。

とまれ、半年かかって出来上がったホームページ。
参考書を買ったり、学校が終わったあとこつこつ作業したり、今思えば授業を受けるより没頭していたな。
課題そっちのけだったな、と思う。
いよいよネットワークで公開!というところまで辿り着いたときは、完成した歓びと、今まで没頭していたものが手元から離れていく淋しさとが混ざったような不思議な気持ちだった。

それから9年たち、ずっと更新ストップ、放置、という時期もあったけれど、今は細々と更新しています。





qpさんから手書きの名刺をもらった次の年、自分の初めての個展の少し前にqpさんも初個展があって、見に行った。
そのときはすこし雰囲気が変わっていたもののまだコラージュ作品を作っていて、壁に不均等に、故にリズミカルに展示してあった。
その中で、「この絵が自分の部屋にあったらいいな。」と思う一枚があって、人生で初めて、作品を買った。
qpさんは「いくらにしようかな。」と言い、それで、無知だった自分は今思うと恐ろしいくらいの値段で買わせてもらった。

「この作品、『いい。』って言ってくれた人いないよ。」と言っていた。
今も、自分の部屋に飾っている。



qpさんは何年か前からか、日記にはずっと写真を載せている(これはほんの一部。右側のフォルダに色々分類されている)。
どうやったらこんな瞬間撮れるんだろう、というような写真を撮っていたり。
写真でも、qpさんの世界だと分かる。
上の窓の写真はqpさんが撮ったもので、自分がすきな写真のひとつ。

絵も、相変わらずいいです。
意識しているのかしていないのか分からないけれど、のびのびしている。
色が、輝いている。