2012年3月21日

保坂和志の小説に出てくる主人公は、自分の中でいつも同じ人になる。現実の、自分の知っている(でも詳しいことはあまり分からない)人で、だから他の人が書いた本よりも、いつも、より鮮明に映像に変換されてしまう。たとえば主人公が猫に餌をあげる場面だとか、誰かと話していて、その相手のことを頭の中でああでもないこうでもないと考えている場面とかは、その自分の知り合いがそうしているような映像として頭に浮かんでくる。他人と時間を共有することに対して、変に無頓着というか、自分の生活に他人が入り込んでくることを強く拒むことがないところも、自分はそういうことが出来る人がうらやましい気持ちがあり、まさにそれはその知り合いのような人で、だから保坂和志の主人公にいつも自分は憧れている。