2016年5月17日

一番新しく描いた絵は、そのときの自分の状態と反して、とても静かで穏やかな絵になりました。

自分が心がけていることに、「深刻でない暗さ」というのがあります。
淋しさとか、ひとりぼっちでいる感覚とか、それも肯定するような絵でありたいのです。

(毎回コメントを求められる度に言っていますが、)海の音を聞いていると、焚き火の炎を見ていると心が落ち着くように、自分の絵もそういう存在に近づけたらいいなと思います。

秋葉シスイ|sisui AKIBA




次の嵐を用意している
"preparing for the next storm"
Oil on canvas
112.0x162.0cm
2016




2016年5月14日

2日目 オランダ

「旅行 NIKKI」と題してやっています。
スーパースロー更新です。
このボリュームがいつまで続くのか。
年内には終わらせたい、な。

〜〜

3月19日(土)
ベッドはちょうどいい固さで枕はふかふか、よく眠れました。
オランダと日本の時差は8時間です(日本が8時間進んでいる)。
もともと体内時計がめちゃくちゃなので、このくらいの時差はたいしたことなかったです。
旅の後半はきっと疲れがたまって早く起きられないと思い、今のうちに早朝散歩をしておこうと思い立ち、朝食前に20分くらい散歩に出掛けました。
ホテルのすぐそばの広場では朝市の準備をしていました。








昨日の夕方歩いた運河沿いの道を途中まで行き、そこからなんとなく惹かれる路地に入ったりしました。
朝7時半くらい。
曇天。
土曜日だからかまだお店はほとんど開いておらず、歩く人も疎ら、道路にもほとんど車や自転車は走っていません。
昨日の日記の最後に書いたドム塔の鐘が15分おきに鳴るので、便利でした(15分経ったからそろそろホテル戻ろう、みたいな)。




バス長い


朝食


朝食は最低限のメニューが揃ったホットビュッフェです。
パンもハムもチーズも5、6種類くらいずつありました。
美味しかったです。
何よりこのホテルで嬉しかったのは、サラダがあることでした(写真撮ってない)。
しかも新鮮なトマトやパプリカがどっさり茎付きのまま大きなボウルに入っていて、そこにあるナイフで好きにもいでカットして食べられるという。
毎朝トマト食べました。
ここに温かいスープがあったら、最高だ!
あと、食卓に塩と胡椒がセットで置いてあるのですが、この塩が美味しかったです。
サラサラのではなくて、胡椒みたいにガリガリ削るやつ。

ヨーロッパでは、使ったタオルはバスタブのなかに放り投げておくか、床にバサッと置いておかないと、交換してくれないことがあるようです。
チップを一応€1.00置いて出掛けました。

バスでデン・ハーグという街へ。
途中、鳥をたくさん見ました。
街なかで見るにしては種類が多い気がします。
カラスや白鳥、鳩にカモメ。
普通に公園にいる。
渡り鳥の群れも見ました。


白いのは鳥です




見えづらいけれども渡り鳥の群れが飛んでいる


デン・ハーグの駅前にある公園、ここにも鳥がたくさん


好きなカモメも居た、根室と同じで丸い大きい


さて今日は一日美術館巡りです。
まず、デン・ハーグにあるマウリッツハイス美術館へ行きました。


Mauritshuis




数年前に改築され、広々としたロビー


フェルメール、レンブラントのコレクションで知られる美術館です。
彼らのかの絵があるんだ、と思うと、そわそわしました。

この美術館はそんなに大きくないので、展示数も膨大ではありません。
集中して観やすいと思います。
しかし悲しきかな、この日は時間に余裕がありませんでした。
部屋を順繰りに見ていたら、肝心のフェルメールの部屋までなかなか辿りつけず、先生が、「秋葉、こっち。」と呼びにきてくれました。
フェルメールの「デルフトの眺望」を観て、「この雲、どうやって描いてるの?」と聞かれたりしました。

「真珠の耳飾りの少女」は焦げ茶の木製の額に入れられ、深い緑の壁にひっそりと掛けられていました。
ひっそりというのは自分が感じた印象で、実際は他の絵と一緒に並んでいます。
そして美術館の一番の売りであるこの作品の前での人々の滞在時間はもっとも長いでしょう。
それなのに、自分の他にもたくさん人がいるのに、そこだけ音がないというか。
自分と絵だけになったような感覚に一瞬なった。

同じくフェルメールの「デルフトの眺望」は、よく描けてるなあ、くらいにしか思わなかったのですが、この後のバスのなかで強い印象を残すことになる。

レンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」は、ここで実物を観るまで、博士が取り出しているのは内蔵だと思っていたのが実は手の筋肉だった、ということが分かって衝撃でした。
いかに図録などの図版をいい加減に見ているかという。
つまんでいるのは手の筋肉でした!
先生も、「今まで腹から出してるのかと思ってたよ。」と言っていた。
先生もそうだったのか、と思い、すこしホッとしました。
あと、登場する男達の目線が全員違う(ひとりの男だけこっちを見ている)、というのが奇妙というか、気持ち悪さみたいなのを感じました。

他にも400年、500年前の絵がごろごろ掛かっています。
自分は絵を観るとき、芸術的な観点にはあまり興味がなく、500年前にこの絵が描かれたときの人々に想いを馳せてしまいます。
何を見て、誰を想い、何をたいせつにして暮らしていたのだろう、とか。

フェルメールの絵のなかの少女は、いわゆる肖像画とはすこし違うものに見えました。
生き生きとしている。
瑞々しさ。
肖像画は長時間のポーズの末描かれたものが多いですが、あの絵は、一瞬を切り取って閉じ込めているような、なんというか、写真に近いものがある。
あのすこし開いた唇は、何か言おうとしているのか、それとも歌っているのか。
何に想いを馳せて、彼はこの絵を描いたのかな、と考えていました。

余談ですが、
何を思ったか、自分はここでは展示の写真を撮らなかった。
ミュージアムショップで買い物しているとき、先生が、「あの絵(フェルメールの「真珠の耳飾り〜」)の前で記念撮影しているのは結構貴重なんだよ。日本じゃ撮れねえから。」と言っていて、「確かに!!!」と思った。
日本は大抵、撮影禁止ですからね。
しかし後悔先に立たず、もう出発の時間が迫っていたので、写真は撮れず仕舞いでした。


ロゴがいい


後ろ髪引かれる思いで次の美術館へ。
デン・ハーグ市立美術館。


Gemeentemuseum Den Haag




中庭


オランダの建築家H.P.ベルラーヘの設計です。
ここはとんでもないところでした。
何がとんでもないって、構造がとても複雑(と思ったのは自分だけでしょうか)。
自分が一番苦手とするタイプの構造でした。
前後左右対称でどこに居るのか分からなくなる。
それに加えて作品数が多いのもあるし、ここで既に頭がパンクしそうになっています。
この建物の居心地の悪さにもう写真撮るのとかやめようかな、と挫けそうになりました(撮ったけど)。


企画展1


企画展2
この人の絵、結構すきでした
クリムトの絵から華やかさを除いてもっと不気味にした感じ
呪術とか魔女っぽさがある


クリムト「ユディト」はウィーンにあると思っていた


半泣きで進む。
それでもいい絵がたくさんありました。
クリムト、シーレ、もさることながら、何よりベーコン!
ベーコンが観られると思わなかったから、一気に元気が戻ってきました。
めげずに回っていてよかった。
さっきのフェルメールのことがあり、ここぞとばかりに写真を撮りました。
ベーコンは、自分の絵の額装にも注文を出していました(3年前、東京国立近代美術館で保坂さんが企画したベーコン展で知った)。
額は金色にすること、そして敢えて反射するガラスを入れること。
だからここでもその額装でした。
観る者が映り込んでしまう。
絵を観るには不向きであるように思えますが、ベーコンはそれを望んだ。
死んだ後もこうやって意思を尊重されているのはいいなと思いました。
ベーコンの絵と自分のツーショットになりました。


真ん中のオブジェはベーコンじゃないよ






そしてモンドリアン。
さすがオランダ出身ということもあり、どの美術館でも作品を観ました。
モンドリアンの初期の風景画の実物を観たのは初めてでした。
あとこの美術館には遺作となった「ビクトリーブキウギ」がありました。


ピエト・モンドリアン「ビクトリーブキウギ」


モンドリアンの初期の風景画


この青い風景画がすきでした


バスで移動中。
もこもこの羊が草を食んでいたり、ぺたんと座っていたり、馬がいたりと、のどかな風景が流れていきました。






途中、ほんの束の間日が差すことがあり、雲の隙間から青空が見えました。
「青空、久しぶりに見た気がするなあ。」と思うのとほぼ同時にフェルメールの「デルフトの眺望」とリンクして思わず写真を撮った。
ああ、フェルメールもきっとこうやって空を見ていたんだなあと、とても感動したのです。
たぶん、この雲も、この雲の隙間の青空も、500年前と変わっていないんだ、と。
それって、すごいことではないでしょうか。
オランダでこの空を見られただけで、「来てよかった。」と思ってしまいました。

この車中でも、後ろに座っていた先生が、「秋葉、次の嵐は来そうですか。」と言っていました。
まさに、今自分が描いている絵と同じような景色で、「来ます。来ます。」と答えた。


写真では記録できない感情でした


本日最後、クレラー・ミュラー美術館。
エーデのオッテルロー村にあります。


Kröller Müller Museum




ゴッホ作品のコレクションで知られていますが、ルドン、ジャコメッティ、ブランクーシ、カルダー、ベン・ニコルソンなど、錚々たる作品が並んでいました(たぶん自分が興味なかっただけで、スゴい作品がもっとたくさんあった)。
ゴッホは特にすきなわけではないですが、やはりそこにあると、観てしまいます。
彼が狂気の作家なのか、自分には分からないけれど、「夜のカフェテラス」とかはゴッホと知らなくても綺麗だなあと思います。

彼の有名な絵がずらり。
それと一緒に、ゴッホスタイルになる前の人物画がすこし並んでいて、それが結構すきでした(撮った写真を観たらブレていた…ので、載せていません)。
高波が立っている砂浜にただ立っている女性の絵。
人物が着ている洋服の色がかろうじて分かるくらい色調が暗い。
明らかに人物が主役である絵なのに、その女性の顔は塗りつぶされていて、表情がない。
背景の海や洋服の描き方を見比べると、顔を描いた後にわざとぐちゃぐちゃに塗りつぶしたようです。
何の感情によって、ゴッホはそうしたのかな、とぼんやり思った。


すきな絵、これが観られるとは
オディロイ・ルドン「キュクロープス」


アルベルト・ジャコメッティ


ぶら下がっているのはアレクサンダー・カルダー


すきな作家、ベン・ニコルソン


ゴッホの作品だけを展示した部屋










地理的に、ひとりではまず行かないところだな、と思った。
美術館自体はこじんまりとしていて落ち着いて観られます。
敷地が広大で、野外彫刻もたくさんありました(これを全部観る方が大変かもしれない)。
庭園(野外彫刻)のみのチケットと美術館と庭園がセットになったチケットがあります。
先生は最初、「ゴッホ観ても仕方ないもん。」と言って、お目当ての野外彫刻だけ観ようとしていたのですが、「ここでしか観られない絵があるなら観ようかな。」と自分がぶつぶつ言っていると、「へいへい、観ますよ。」と、付き合ってくれました。
観てよかったです。
観なくてもいいかもしれないけれど、観てよかった。
ここも晴れていたら気持ちいいだろうなーという庭園でした(でも曇天でした)。


クリストのドラム缶の作品はテントで覆われてた
先生は、「あのテントもクリストがやったんじゃねえのかな。」と言っていた


オランダの建築家ヘリット・リートフェルト設計のパビリオン
1955年の国際彫刻展に出展され、
その後1965年にクレラー・ミュラー美術館に移築された


ジャン・デュビュッフェ
工事現場の階段みたいなのが置かれていて、
その上から眺めるようになっていた


マルタ・パンの作品の上で、
何か撮っている女の人を撮りました


名前の分からない鳥、かわいい


ユトレヒトに戻って、夕食は運河沿いのレストランに行きました。
「えっ」と思われるかもしれませんが、フライドポテトがめちゃくちゃ美味しかったです。
オランダはマヨネーズで食べるのが一般的だそうです。
あとはパスタとか肉料理とか食べた。
どれも美味しかった。
店の名前を忘れました。
猫が居た。


全然おいしそうに撮れなかったけれど、おいしかったです




一日に美術館3カ所はなかなかしんどいです。
日本でもまずそんなに行かない。
へとへとです。
頭の整理をする余裕も無く眠ってしまう。

おやすみなさい。