2007年11月19日

「消灯時間から1時間経ったら、庭のクレーターで待ち合わせしよう。」というメモを渡されて、ベッドの中で寝たふりをしている自分は、その時を待っていた。夜は冷えるのだけれど、パジャマの上から1枚上着を羽織っただけで、あとは、返す本を持って部屋を抜け出した。まだ見回りが来ないうちに。誰にも見つからないように。庭には奇妙な形をした遊具が点在していて、クレーターはそれらの中心にある。その窪みに入ってしまえば、建物からの死角になるからいつもそこで待ち合わせをする。歩いてクレーターに着くと、アーロンは頭以外を毛布にすっぽり包んで座っていた。声を掛けると毛布を半分貸してくれた。


肌が白い、目が茶色い、髪が茶色い、いい声。自分が知っているのはそのくらいで、あとは季節の話や天気の話や、今日の食事の話をする。たまに笑ったりして、黙る。あとは寝転がって月や星や雲を見る。それについて話して、黙る。友達だから、それでいい。けれどそういう間に、ここを本当に抜け出したらどうなるのだろう、と考えたりしている。でも言わない。アーロンも、言わない。


先週の日曜日、街に行ったとき買ったものを渡した。2つ買ったうちの1つを。本を貸してくれたお返しに。それは木で作ってある小さな置物で、鳥の形をしている。何の鳥かはよく分からないのだけれど、ポケットに入れていられるし、白くてきれいだったから。アーロンはまたいい声で、小さくお礼を言った。