2009年7月25日

7月19日に、用事を済ませてなんだか途方に暮れたように疲れて、ああ早く部屋に戻ろうなどと考えながら歩いて、帰りの電車に乗った。外を眺めていると、黄色っぽいというか、、うん、黄色っぽい。ともかく、普段ではあまりない空模様で、というのは、雲が、雨雲のように厚いのだけれど、明るい、というような空気、世界。普段は、こういう、日常的でない自然の現象を喜ぶほどなのだけれど、その日はなんだか憂鬱で、「ああ不気味だな」と思っていた。そうして電車を降りたら、ホームに居る人たちが、同じ方向を見上げてザワザワしている。なんだと思って、自分も同じ方向を見上げたら、ホームの屋根と止まっている電車の屋根の隙間に、それは鮮やかに、はっきりとした虹を見た。なんだこれはと思って、駅を出てからもう一度見上げたら、それは、完全な虹だった。始まりから終わりまで、地面から地面まで、途切れていない、完全な。何より色が鮮やかすぎて、目を疑うとは、心奪われるとは、あのようなことを言うのだろうか。そしてようく見ると、その虹の左側に、薄く、もうひとつ虹が出ていた。周りの人はしきりに、携帯電話のカメラやデジカメで撮影していた。自分はというと、ただ見ていた。写真に撮ると、弱くなる(何がかは知らんが)、漠然とそう思った。それと同時に、「忘れたくないものは写真に撮らない」という、小学校のとき道徳の授業で読んだ文章の言葉を(しかしこの言葉は怪しいと感じるが)、思い出した。それだけで、綺麗じゃないか。そうやって眺めながら、もしかしたら見ているだろうか、と一瞬思った。自分と同じように、もうひとつの薄い虹にも気づいただろうか。虹はだんだん、色が薄くなっていったけれど、空は相変わらず黄色っぽく、それに夕方のオレンジや紫が混ざって、妙な色をしていた。もし、この虹が、時間帯が違ったり、方角が違っていたら、見られなかっただろう。自分に限らず、虹に気付いたすべての人において。





この写真は、この前壊してしまった携帯電話。