2010年12月23日

この前の日記に書いたCDをかけて、深く考えず車を走らせ海へ向かった。夕日が落ちるすこし前に着いて、胸にしみる音楽と、年末という季節柄と、冬の風の冷たさの中に身を置いて、何を考えるでもなく海を眺めていた。波は、なぜこうも体と心を無にしていくのか。なんというか、今日の海は本当に綺麗だったんだ。ただそれを他に誰も見ていないということが、信じられなかった。この世界にひとりぼっちで居ることを確認するために、自分はたまにこうしてふと海へ向かう。大体、蓮沼海岸に行くのだけれど、この海岸の近くにはシーブリーズという丸太小屋の喫茶店があって、いつも帰りに必ずここに寄る。コーヒーを飲みながらゆっくりして、本も持って行かなかったから、店に置いてある絵本を読んだ。ウサギの親子の話の「ぼく、にげちゃうよ」という古い絵本で、途中出てくる、母ウサギが雲になって空から風を吹き、子ウサギのヨットがその風に乗って海原を行く挿絵が、とても気に入った。絵本を読み終わった後も、その挿絵のページを眺めていた。日もすっかり落ちたころ、また音楽をかけながら帰った。部屋に戻ってからも、ベッドの中に入ってからも、今日見た海や空の色と空気の冷たさと、時間の流れを遅くしたような感覚が、まるで夢のようにふわふわと周りに存在していて、その中で自分はしばらく動けずに居た。